今も語り継がれる'70年代アメリカ映画伝説第2弾!ZIGGY FILMS 70's「ナッシュビル」「天国の日々」

今も語り継がれる‘70年代アメリカ映画伝説 第2弾!

1970年代、型破りな発想と斬新な映像、そして究極の映画的描写力で作られ、今に語りつがれる伝説の映画が誕生した。
公開当時、興行面では闇に葬り去られたが、それらの多くは今なお映画ファンを引きつけるカルト的な魅力を放っている。

そんな映画を紹介する「ZIGGY FILMS‘70s vol.2〜70年代アメリカ映画伝説」――
昨年の『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』『バード★シット』に続く第2弾は
ロバート・アルトマン監督の『ナッシュビル』とテレンス・マリック監督の『天国の日々』だ。

アルトマンは2006年のアカデミー賞名誉賞の授賞式で「映画作りとは海辺で砂の城を作るようなもの。
やがて大洋が作った城を運びさる、それでも砂の城は胸に残っていく」とスピーチして喝采を浴びたが、半世紀近くを
スタジオと闘い続けながら多くの傑作を作り上げて来たアルトマンならではのメッセージである。 今回の『ナッシュビル』は大統領候補の選挙キャンペーンのためにカントリーウエスタンのメッカ、ナッシュビルに集まったミュージシャン、その中の24人を中心に描かれる。アルトマン流、“群像劇ドラマ”の原点がここにある。

最新作『ツリー・オブ・ライフ』がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞したテレンス・マリックの『天国の日々』は、
‘73年の記念碑的デビュー作『バッドランズ』に続いて発表した第2作である。今世紀初頭のテキサスの広大な農場を舞台に、時代に翻弄される4人の若者たちの青春、希望、挫折を、人間と自然に敬虔な深いまなざしを通して描き出した、
マリックの代表作だ。“光と影のバラード”と謳われた撮影監督ネストル・アルメンドロス、ハスケル・ウエクスラーの映像は時代を超えて見る者を圧倒する。

自由な映画制作で独自の映像空間を作り上げてきたアルトマンとマリック。
映画ファンの間でカルト的人気を誇る『ナッシュビル』と『天国の日々』は映画に対する概念を
変えてしまうほどの魅力あふれる作品だ。

伝説映画の幕がこ日本で再び上る、拍手!

滝本誠(映画評論家)

あの世からロバート・アルトマンがにやりと日本に降臨する。
おれが死んだと思っていたか、バカめ。お前の国もメチャクチャだな。
もっとも、おれの国も大統領が<殺った! 殺った!>と暗殺までエンタメ化、ハリウッド化しちゃったけどな。そもそも歌から暗殺まで、すべてエンタテインメントなのさ。この国ではね。大統領は、候補も含め簡単に暗殺されてきたからな。
そのあたりの感覚、『ナッシュビル』を観るとバッチリ学習できるだろうよ。 『ナッシュビル』再公開の意味は何か?
単に過去の話題作、問題作、ヒット作の回顧上映ではあるまい。アルトマンにそんな懐旧は似合わない。
では、意味はどこに?

一九七〇年代、キャンパスでカルトと化した作家カート・ヴォネガット・ジュニアは『ナッシュビル』に関して
こういったものだ。「困難な時代、危機の時代にこそ芸術作品が有効であってほしい、『ナッシュビル』は私の夢を叶える、きわめて稀な傑作だ。」

反体制運動をふくめ、六〇年代カルチャー退潮がはっきりした
1970年代半ばのアメリカの基本右派のカントリーソングの聖地の選挙キャンペーン・コンサートにアルトマンが
仕掛けるノイジーな数日間!
大統領候補の広報車が怪しいメッセージをまき散らし、カントリー歌手他メインゲスト24人が乱れ舞う。
どこが2011年の日本の難問に有効か?そんな異議にはキック・アス!この騒々しく不吉な祝祭性こそ、知性も生命も
ゴミとして廃棄されとしている日本に必要なのだ。
アルトマンに脅され言わされているのではないかって? 幾分はね。

そうじゃねぇよと、あの世のアルトマンは舌打ちしているかもしれないが、世間常識で言うところの遺作、
この世にあばよの合図がなされた作品が『今宵、フイッツジェラルド劇場で』(2006)だった。
映画精神を受け継ぐポール・トーマス・アンダーソンの介護に頼りながらも多人数出演者のアンサンブル・コントロール
はいつもながらの魔法めいたアルトマン演出。この映画でカントリーソングをたっぷり楽しんだ、そこそこに加齢した
だれもが、『ナッシュビル』を思い浮かべたにちがいない。
あの作品をスクリーンで観る機会は生きている間に訪れるのか? そう、その日がきたのだ!

『今宵、フイッツジェラルド劇場で』には、メリル・ストリープ、リンジー・ローハンといった初出演組スターがほとんどだったが、アルトマン組として映画的に彼を看取ったといえる存在が、リリー・トムリンである。
素のレベルに達した脅威の演技力をあらゆる活動の場で見せつける彼女の映画デビューに手を貸したのがアルトマンで、
その作品こそ『ナッシュビル』なのだ。黒人のゴスペルソング・グループの白人リード・ボーカルという、
なかなかありえない役柄である。ともかくアルトマン・アンサンブルにおける彼女の存在はまさに混乱をコントロールする女神に近い。放散を求心にさえみせてしまうのだ。 。

鬱陶しいまでに傍若無人なBBCレポーターとしてアメリカを追放されたチャップリンの娘ジェラルディンというのがいい。
芸能は政治なのだ。カントリー歌手トム・フランクにキース・キャラダイン、改造オートバイにのった風来坊に将来の
蝿男(『ザ・フライ』)ジェフ・ゴールドブラム、当時の売れっ子ハリウッド女優カレン・ブラック等々の集合が面白いが、本人役で出てくるエリオット・グールド(『ロング・グッドバイ』)、ジュリー・クリスティー(『ギャンブラー』)もなかなか。いずれにせよ1975年段階で一度でもアルトマンと関わった俳優たちが、どんな形であれ彼に付き従う
ということをこれは証明する。俳優だけではない、観客もまた!